第1回 A.G.さん 48歳 男性 クローン病 病歴約30年

 私はクローン病歴が多分30年程の男性です。多分というのは、高校3年生の頃には腹痛や下痢、発熱といったクローン病の症状で体調を崩していて、名古屋市内の総合病院で検査入院をしたのですが、当時の検査水準ではクローン病という診断が付かず、高校3年生で受験を控えていたものですから、精神的なものだろうとされ、過敏性大腸炎という診断が下っていたからです。

大学に入学した後も一向に症状は治まらず、ひどい時には水分を摂っても下痢をしてしまい、1週間で5キロ程体重が減ることもありました。しょっちゅう倦怠感があるせいで大学を休みがちになり、1年留年してしまいました。

その後何とか地元の会社に入社できたものの、相変わらず体調は好不調の波が大きく、結局8年で会社を辞めざるを得ませんでした。幸い実家が自営業でしたので、今は、自営業をしています。

2009年の11月頃痔瘻がひどくなり痔の専門病院で手術をしました。後日大腸内視鏡検査を受けたのですが、腸管が狭く内視鏡のカメラが入りにくい、これはクローン病かもしれないとのことで、改めて県内の私立大学病院に入院し検査を受けました。大腸内視鏡、胃カメラ、その他様々な検査を受けたのですが、体調の悪さも相まってしんどく、入院中は心身が落ち着くことがありませんでした。

検査後主治医より、「クローン病に間違いない」と言われ、39才にしてようやクローン病の確定診断が付きました。当時はクローン病に対する知識が乏しく、不安、心配が大きかったものの、高校以来体調が悪かった原因がはっきりしたと、ほっとする気持ちもありました。

主治医には、すぐにでも手術を受けた方が良いと言われたのですが、手術に対する恐怖が極めて大きくどうしても踏ん切りが付かず、まずは食事療法や数々の代替医療を試すことにしました。

結局それらの治療は、自分の場合病歴の長さもあってか芳しい効果は得られず、2010年10月には症状が悪化、同私大病院に再入院し手術をすることになりました。当時は脚の関節の痛みがひどく、自力で起き上がることができず、杖をついて起き上がっていたほどです。炎症反応(CRP)が20程あったそうです。家族や友人達からは、症状が悪化する前に手術を受けた方が良かったのにと言われたものですが、食事療法、代替医療を受けている期間は、病気や手術に対する不安、心配、恐怖で混沌とする心を落ち着かせ、整理する為の大切な時間だったと思います。それがあったからこそ、納得して手術を受ける心構えができました。

約3か月にも及ぶ絶食期間を経て、クローン病の手術には定評のある県外の大学病院へ転院、2011年1月に大腸と小腸の狭窄部分を切除する手術を受けました。

手術は当初の予定時間の倍近くかかる13時間にも及ぶもので、麻酔から目が覚めた時は全身が痛み、ちょっとでも体を動かすと大げさではなく激痛が走るといった状態でした。のどがからからでしたが、それを伝えようにもおなかに力が入らなくて声も出ない。この苦痛がいつまでも続く気がして途方に暮れる思いになりました。ひどい痛みが治まり、なんとか「平穏」な入院生活が過ごせるようになるまでに10日程かかったと記憶しています。

その入院生活中に感じたことは、同じ病気の方々と、病気のことや治療のこと、もしくは病気と共に生きることについて語り合うことが、いかに大切かということです。

「痛みで体が辛い」「治療の効果がなかなか現れない。どうしたら良いものか」「体の痛みも辛いが、何より社会からの疎外感で心が辛い」

一人一人が抱える苦悩を表出し、その想いに向き合うことは、自分自身の共感する力、他者を慈しむ力に気づくきっかけとなりました。

私達の病気の特性上、普段の生活で同じ病気の方々と語り合う機会はそうそう無いと思いますが、名古屋IBDでは、参加者同士が、語り合いや情報交換により、互いが互いの心身のサポートをできるような催しもあります。

病気であっても、不安や心配な心に負けずより善く生きたい、そう願っているIBDの方、もしくはその家族、友人の方々、一度名古屋IBDの患者会に参加してみませんか?

自分が知らなかった前向きな気持ちに、気づく機会になればと思っています。

 

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